反広告社のダサさを3項目でわかりやすく解説する
Twitterに突如出現した悪戯結社【反広告社】が謎すぎる!!! - NAVER まとめという記事を見まして、ちょっと覗いてみたら「えっ? えっ? ダサ……え? 本気でこれやってんの?」とオタオタしながら釣り針を探してしまったのですがどうやらマジもんで素のダサさをまろび出している様子、この「え? マジで?」感をみなさんと共有すべく解説することにしました。
まず反広告社とは何か
以下に反広告社の Twitter アカウントが投稿した所信表明(らしき文)を貼ります。
弊社反広告社は架空広告会社。随意に広告主及び訴求対象を設定の上、街中に存在すべき架空広告を制作公開する悪戯結社である。実在の会社大学等を業界規模問わず広告主として想定、その主たる利用層を訴求対象とする。稀に真面目に広告するが、基本的に実務家が制作すると失職する様な広告を制作する。
— 反広告社さん (@Anti_Ad_Inc_) 9月 18, 2012
よくわかりませんが、既存の広告をネタにした悪辣なパロディを制作し今の広告業界を軽やかに皮肉りつつ、ときどき真面目な広告を作って「俺たちはただのおふざけ集団じゃないぜ」感を匂わせたいのかなと好意的に解釈しました。うんうん、いいと思う。何者かは知らないけど若人のアート活動ってのはそうじゃなきゃ。
なんだか気鋭のアーティストに惜しみなく出資する老紳士みたいな心境に陥ったのですが、作品を見て心がキュッと引き締まり口から「マジで?」とこぼれました。第一のマジでポイントは皮肉のダサさです。
1. 皮肉がダサい
UNIQLO 53号 twitter.com/Anti_Ad_Inc_/s…
— 反広告社さん (@Anti_Ad_Inc_) 10月 12, 2012
はあ。
電通56号 twitter.com/Anti_Ad_Inc_/s…
— 反広告社さん (@Anti_Ad_Inc_) 10月 12, 2012
なるほど。
Village Vanguard第31号 twitter.com/Anti_Ad_Inc_/s…
— 反広告社さん (@Anti_Ad_Inc_) 10月 1, 2012
そうですか。
どうも既視感のあるスタイルだなと思ったら、政治家の顔写真に「私は売国議員です」とか何とかキャプションつけて拡散したがる人たちの作品と似ているのですね。こういうの:
体裁真似て言葉をもじっていっちょあがりの寸法ですね。民主党憎しの方たちは反広告社に依頼されると素敵な広告ができあがると思います。
2. 皮肉じゃなくてもダサい
とくに何の皮肉にもなっていないパロディもあります。
ビックロ twitter.com/Anti_Ad_Inc_/s…
— 反広告社さん (@Anti_Ad_Inc_) 10月 28, 2012
ふむ。
世界堂41号 twitter.com/Anti_Ad_Inc_/s…
— 反広告社さん (@Anti_Ad_Inc_) 10月 8, 2012
へえ。
Tokyo Disney Land 第26号 twitter.com/Anti_Ad_Inc_/s…
— 反広告社さん (@Anti_Ad_Inc_) 9月 26, 2012
はいはい。
全体的に朝目新聞っぽいですね。「ビックロ」と「ブッコロ」の韻を踏んでいるのはまだ微笑ましい可愛げが感じられていいと思います。こういうおみやげのTシャツ昔見たよ。
「美大生を皆殺し★」「生きて帰れると思うなよ」については、愛されるべき企業やキャラクターが豹変することで風刺性を獲得できるんですか? 殺すと言わせときゃ面白いみたいな考え方は間違ってませんか? ビジュアルにインパクトがあればそれでいいんですか? と蓮舫めいた問いを発するしかありません。
3. 真面目なのが真面目じゃなくてダサい
この作品は「稀に真面目に広告する」に相当する感じでなかなかよさそうです:
Tokyo Tower 44号 twitter.com/Anti_Ad_Inc_/s…
— 反広告社さん (@Anti_Ad_Inc_) 10月 10, 2012
が、「友達と行って、恋人と帰った。」というコピーは(ざっと検索した限りでは)これが初出:
友達と行って、恋人と帰った。#花火大会に行きたくなるコピー
— copy Rider r.wakiさん (@r_s_wt) 6月 30, 2012
ですし、東京タワーの画像は東京スカイツリーもいいけど、東京タワーもいいよ!からの引用です。
真面目な顔して3分で作ったんでしょうか。
ダサさには意味があった
圧倒的ダサさに眩暈を起こしながら反広告社の Twitter アカウントとにらめっこしていたところ、おぼろげながら彼らの真意が見えてきました。先の NAVER まとめでも言及されていたとおり、反広告社の作品は数百 fav/RT を数える人気コンテンツとなっています。この事実と、意図したようなダサさから推測される反広告社の動機は3つ:
- 劣悪なパロディ広告を拡散することで、社会的配慮に凝り固まった既存広告を嘲笑する
- 「劣悪なパロディを作るアカウントが」「拾い物のコピーと画像で片手間に仕上げたような」“真面目な広告”が人気を博すことを証明し、手間暇かけた既存広告を愚弄する
- それらの“反”広告に群がる人々(加えてバッシング記事や叩きブコメを書く人々)をもアートの一部として展示する
まんまとアートに組み込まれてしまったことに気づいたときは戦慄を禁じ得ませんでした。ダサいように見えて非常に巧妙な手口を使う集団、反広告社。あなどれません。
あ、 Twitter で dis ると即ブロックしてくるあたりも“それっぽい”感じがしてとてもいいと思います。
追記:ダサいとは何か
ダサいの基準は何ですかと聞かれたので「そんなん主観じゃボケ」を飲み込み無粋を承知で言語化してみます。
- 主張にひねりがない:ユニクロの広告に「みんな違ってみんなゴミ」とコピーをつけるのは、世の中には大衆週刊誌の中吊り広告というものがあるんだよと教えてあげたくなるスタイルです。もしかしたら「よくぞ言ってくれた」と思う向きもあるかもしれません。
- パロディ手法の古さ:「ブッコロ」や「(ここには載せていませんが)Facefuck」については、アジダスTシャツやサザエボンぬいぐるみを修学旅行先で死ぬほど見てきたんでもういいです、飽き飽きです。そういうの昭和からやってます。
- 内容がない:「美大生皆殺し★」は一見ビックリするけどだから何、世界堂やモナリザが皆殺しって言う理由はあるの、何を批判したいの、というところです。初見のインパクトを重視して中身がない旧来の広告すべてを風刺したいんですかね。そこまで裏を読んでやる義理はない気がしますが。
- パクリ:真面目そうな広告はコピーも画像もほぼパクリです。拾い物をつぎはぎでクリエイター気取りたあダセえなと堂々言える点ですね。これについても結論で触れたように「そのような手法で模倣できてしまう既存広告への批判です」と言われてしまうかもしれません。へへえゲージュツ様の後出しジャンケンには敵いませんや平にご容赦と頭を垂れる次第です。